仙台高等裁判所 昭和29年(う)69号 判決
昭和二十七年一月二十五日の農業協同組合臨時総会において右計画を正式に決定した上、その払下げ及び転売に要する経費並びに運動費を大体二、三十万円と見積り計上し、売得金を、右費用、払下代金及び営農資金の支払組合の赤字補顛費並びに造林育成費等に充当し、余剰金を各組合員に分配することを決議したものであつて、右決議において計上された二、三十万円の金額は、右説示のとおり本件防風林の払下げ及び転売に要する経費並びに運動費としてその費途を限定する趣旨において支出を承諾されたものであつて、所論のように経費の外被告人に対する報酬及び立替金の金利を含めたものとして如何なる用途に費消するも差し支えないという趣旨において自由処分を承認されたものでないこと、被告人は組合事務の総括者兼会計担当者として右総会の決議に基き、代金三十万円で右防風林の払下げを受け、これを矢守孝一に代金百二十六万円で転売し、その受領した売却代金中百四万円を右の諸支払に充てた上、組合に対しては四百万円で転売したと称してその支払の内訳を報告し、事実上の売却代金との差額二十二万円中十万円を、委託の趣旨に肯きほしいままに自己の用途に費消する目的を以て着服した事実が明らかであり、原判決の判示するところはやや簡に失するきらいはあるが結局同旨の事実を認定した趣旨と解される。而して金銭その代の代替物といえども、一定の目的費途を定めて寄託された場合においては、その所有権は受寄者に移転しないものと解すべきであるから、これを自己の用途に費消し或は自己の用途に費消する目的を以て事実的処分をすれば横領となること勿論であり、従つて被告人の本件着服の所為は業務上横領罪を構成するものというべきである。所論の後日組合総会において前記二十二万円の費途につき事後承認を得たというがごとき事情はすでに成立した犯罪並びに被告人の罪責に何等消長を及ぼすものではなく、又原判決は所論のように被告人が百二十六万円で売却したのに百四万円で売却したと偽つて報告したこと自体を横領行為と認めた趣旨ではなく、右虚偽報告の点は被告人の領得の意思を推測させる一事情として揚げたに止り、本件横領行為の態様として着服の事実を認定した趣旨である。
〔後略〕